「お前また小さな女の子泣かしたあるか?」
「人聞きの悪い、あいつが勝手に泣いただけだ。しかもまたってなんだ、 またって」

イギリスが部屋を出れば、やはりそこには中国がいた。
中国が入れ替わりに入ると思えば、ちょいちょいとイギリスを手招く。
訝しく思いながらもイギリスは後ろ手でドアを閉めると一歩中国へと踏み 出した。

中国が心持ち静かに口を開くのに、イギリスも静かに返す。
聞かれたくないのだろう。
そうは思うが、きっと聞こえるはずもない。
外は歓声でいっぱいだし、当人もこちらに気をやる余裕はないだろう。




「まぁその部分はいいあるが…言わなくて良かったあるか?」
「何を?」
「我が決定打をしたということある」


中国の言葉に、イギリスはすっと目を細める。
中国はそんなイギリスに口端を上げながら続けた。


「あの子は食料面での依存が我に大きかった、それを断ち切ると宣言され たと言えば、あの子は諦めたんじゃないあるか?」
「デメリットはちゃんと教えた。それだけが理由じゃねぇし、決定打でも ない」
「それでもこの返還は貴様にメリットはない。むしろ、デメリットであろ う?」



イギリスはしれっと中国が言葉にするのに、わかりやすく表情を歪めた。
そんなのは、イギリスとてわかっている。
けれどそれを選ばざるを得なかったのは他でもない中国のせいだ。

今更そんなことを言われて、イギリスにどうしろと言うのだろうか。
苛立ち紛れに中国を睨み付ければ、中国は満足そうに笑う。




「――…ちょっとした仕返しある。気を悪くするな」
「うっせぇな…、さっさとあいつのトコ行けよ。俺はもう、ここに用はな い」



経済状況も食料状況も、香港は中国の手がなければ立ちゆかない。
イギリスが努力しようと、元々が中国の物であり中国の中にある香港は、 やはり中国の一部なのだ。


高度な自治が出来るよう、これまでイギリスは手を回してきた。
皮肉なことだ。
イギリスは香港を植民地としながら中国から独立できる準備を、進めてき たのだ。
けれど香港自身はそれを望んでいなかった。




「イギリス、これで終わったと思ってるあるか?」
「思うかバァカ。お前の動き云々で俺にも火の粉が降ってくるんだよ。俺 がしたことも完璧じゃないし、あいつの意向は置いておいてもお前との一 体化は続く。それが順調に何事もなく進むなんて、誰が思うか」
「つまり、これからもお前は我らを…あの子を見守ると言うことであるな 」



中国がすっとイギリスの横を通って、ドアの前にと立つ。
イギリスは中国の言葉を鼻で笑った。



「監視の間違いだ」






中国は、そうあるかとだけ呟いて香港の待つ部屋にと消えていく。
部屋を開けた瞬間聞こえてきたのはいまだ泣き声で、イギリスは思わず振 り返った。



そこで視線があったのは、中国の漆黒の瞳で。
香港とは違うその黒い瞳に、イギリスはかっと顔に血が集まった。






「せめてその姿をみせてやればよろし」
「―――…黙れ」
「お主も、可哀想な奴あるな」





ぱたん、と閉じられたドアを開ける気力はイギリスにはなかった。
振り上げた拳の降ろす先は見つからず、イギリスは壁を殴りつける。






初めてあったときのみすぼらしい姿を覚えてる。
がりがりで、自分から動くことも知らないような、子ども。
最初イギリスは上海が欲しかった。
イギリスにとって東洋の真珠は上海だったのだ。
それでも思わず香港に手を伸ばしたのは、真っ直ぐに見上げてきた瞳がい つかの風景と重なったからだ。

その子を一人前にしたのは自分だと自信を持って言える。
教えたことを懸命に覚える様子は可愛くあったし、世界に認められるぐら いまで成長したのは誇らしかった。





けれど。




「いらねぇんだよ……」

イギリスはぐしゃりと髪をかき上げてひとりごちる。

今はそういえるだろう。
絶対の信頼をおくだろう。




けれど永遠なんて信じない。
いつかきっと、この手を振り払う日があの子にもくるのだ。









ならばその前に。

「――――…俺にお前は、必要ない」






イギリスはもう一度そう呟いて。
今度は振り返ることなく去っていくのだった。












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中国さんとイギリスさん。
ちょこーっと米を絡めつつ、まとめ。
色々ネットで回ってみて、返還の決め手になった理由を散りばめました。
話の大筋には関係ないので、簡単にしか書いてありませんがすいません。(その上やはり資料不足かと…orz)
完全妄想ですが、不毛の土地であった香港を一人前にしたイギリスは、や はり手を掛けた分香港を愛しいと思っていて欲しいです。
けどそれを認めないのは米の件があるから、とかいう話でした。(いきつ くとこはそこか)
ちとやはり理解不足が否めないので、もう少し勉強してから出直してきま す…!!
もう一回、現在の香港でスモッグに苦しんでる様子をちらりと書きたいな とは思っています。

07/07/01





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