*このSSは頂き物漫画から派生させた物です。
まずは
「ささやかに反抗」
をご覧の上お進み下さい。
そう。
それはあいつが、気づいてしまえば簡単なこと。
その名前は食傷気味だからでして。
アメリカが。
アメリカを。
大事な弟の名を口にするかつての幼子は、以前とは違いそれは楽しそうだ。
いつもは泣くのを堪えながらだったり。
怒りながら、その名を口にするものだった。
そして自分は。
そんな彼を慰めたり窘めたり宥めたりしながらその名を聞いていたのだ。
アメリカは。
アメリカの。
「それで、アメリカがなっ」
弾んだ声。
滅多に見せない、満面の笑み。
それが見られるのはきっと、彼の幼き頃からの友だけなのだろうと。
漠然と感じていたのだけれど、どうやら間違いだったらしい。
『俺、イギリスのこと大事にするよ』
いつだったか会議の休憩中にそんなことを言われた。
コーヒーを片手にあまりに自然に言われたものだから、最初はその言葉の意味することが理解できなくてしばしの時間を要した。
そんな俺にアメリカは言葉を続ける。
『本当のことを言うと、まだ悔しいよ。イギリスが今の俺を認めてない…見ようとしてないのは。でもそう言ってれば、俺とイギリスの距離は広がるだけなんだ』
『……………』
『最初も多分、慣れてないだろうからイギリスは警戒するだろうし。そんなイギリスに俺も苛々するかもしれないけど…、最初だけだと思うんだ』
『見守っててくれるかい?』
そういって、振り返ったアメリカは大人びた表情で口元に笑みを浮かべていた。
その顔はイギリスに妙に似ていて、間違いなくアメリカはイギリスに育てられたんだろうと。
ぼんやりとそんなことを思った。
なんでわざわざ俺に言うんだろうとか。
とうとう気づいてしまったのかとか。
言葉になりきれないものが胸の中をぐるぐるしていたのだけれども。
『見物だな』
そんなことをおくびに出さないことは造作もなく。
長い時間を過ごしてきてしまった。
「おい、どうかしたか?」
イギリスが見上げてくる。
少し、考え込んでしまっていたらしい。
満たされているおかげで余裕のあるイギリスは、心配そうな色を浮かべている。
ああらしくない。
それがあの子どもの(大人になってしまったけれど)影響だというのも、よろしくない。
「なんでもねぇよ。それで?アメリカと日本とどうしたって?」
聞き流してはいたが、聞いていないわけではない。
少し記憶の糸をたどってイギリスを促せば、控えめに続きを話し始める。
一生懸命なイギリスは、可愛いと思う。
外見だけならば元々認めてたぐらいに、好みなのだ。
少々中身が伴わず、可愛さ余って憎さ百倍を地で行っていたがこれまた綺麗に毒気が抜けている。
物足りない、と思うと同時にそれは嫉妬なのだろう。
あのころのイギリスを、思い出す。
まだイギリスにとって自分しかいなかった、あのころ。
戻りたい訳じゃない。
けど、
「アメリカ、」
アメリカ、アメリカ、アメリカ。
あーうるせぇ。
「……っ!フランスっ!?」
本日一度目ようやく呼ばれた俺の名前。
忘れた訳じゃなくて良かったよ。(本当に)
「寒いから、早くあいつらのところ戻ろうぜ」
「……あ、ああ!」
ぎゅっと繋いだ手は寒さのせいにして。
少しばかり色ぼけてる坊ちゃんは気づかないでしょう。
ささやかに意趣返し。
口を塞がなかった自分に万歳。
贅沢は言わないからねぇお願い。
もう少し俺の名前も呼んで。
(そうじゃなきゃ今度こそ口を塞いでしまうから)
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米英←仏です。
メリカ自覚、大人になってしまえばランスの失恋は決定的じゃないのかなという話です。 友人の頂き物漫画にもえまくって出来てしまいました。
元々英が恋愛感情の意味で仏を好きであろうと、優先してしまうのは米だと思うのですよ。
米よりも仏の方が英を幸せに出来るとしても。
だから米がちゃんと英のことを大事にするって決めたなら、仏は叶わないと思うのです。
(ここは仏英メインサイトです)
まだ少し書き足りないのでこのネタで連作行きそうな感じですが、米英部分よりも仏部分のが多くなりそうです。
私仏兄ちゃんが大好きなんですよ……。
自分だけが本当に楽しい話ですが、同じように思っていただける方がいらっしゃれば幸いです。
08/05/11
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