「でもこれ以上不幸になることはないと思うんだ。君といることが、一番の不幸 だし?」



ああ、だからそんなに簡単に傷ついた顔をするもんじゃないよ。
アメリカの言葉に何か言いたそうにするものの、結局は口を閉ざすイギリスにア メリカは内心大きくため息をついた。








二律背反











この状況は、かなり心身に悪い。




(ただでさえ最近はぼーっとしてるって、リトアニアに言われてるのに)

アメリカは簡易のハンモックを作ってそこに早々に避難した。
下ではイギリスがなにやら作業をしている。
時折痛いだの何だの言いながら、それでも音は順調に進んでいた。







アメリカはといえば、目を閉じて強い日差しを受けている。
目を閉じているはずなのに瞼の毛細血管を、照りつける太陽が赤く映し出してい た。


まぶしい。
もとより本気で昼寝をする気はなかったが、これでは到底寝ていられはしない。




下のイギリスに意識をやれば、彼は順調にことを進めているらしい。
それはいいことだがこの太陽の下、熱中症になりやしないだろうか。






思い出す。
夏の日に外を駆け回る自分を呼び止めたかと思うと、駆け寄ってイギリスが帽子 をかぶせた。
少し大きい麦わら帽子は、けれど確かにアメリカに涼しさを作る。



脱げないように自分でもぎゅっ、と帽子を両手で押さえればイギリスが笑った。
少し赤くなった頬をは日焼けだけでなくて。




うれしそうなイギリスの手をつかんで、走り出す。









そんな日も、あった。
















「よぉーっし出来たッ!みやがれアメリカ!!」
「わぁ、これ君が作ったのかい?すごいじゃないか!!」


イギリスの歓声に、ぱちりと目を開けた。
アメリカは自分が思っているよりも傾いている太陽に、眉を寄せる。


まるで白昼夢。
どくどくと高鳴っている心臓と、荒い息はこの暑さのせいだろうと理由付けなが らアメリカは深呼吸を繰り返す。
駄目だ。
どうしてもことあるごとに昔のことが思い出される。
ただ料理を食べるだけで思い出すなんて、これじゃ彼のことをどうにも言えない 。
今だってそうだ。

どうして日差し一つで。
彼の笑顔を思い出すんだ。





アメリカは頭を緩く降りながらトッと軽く砂地に降り立った。



そこにはひとつのいかだ。
イギリスが得意そうに胸を張っているが、確かに立派な物だった。




彼は剣や銃の腕はすばらしい。
しかしそれ以外のことはからきしである。
一人で作り上げるぐらいなのだから相応の腕が必要になるが、木材の加工(と言 ったら悪いだろうが)とすれば彼が得意なのは頷ける気がする。
昔から自然の物に対しては相性がいいのだイギリスは。

それに、イギリスは海にも得意だ。
大英帝国海軍は彼の誇る軍隊だった。







「すごいな、イギリス」


素直なアメリカの言葉だった。
アメリカはいかだに手を伸ばしながらイギリスを振り返る。
イギリスは、擦り傷が出来た手をさすりながらもその言葉に笑って頷いた。






「うん」






偉そうではなく、嬉しそうに。
眉間に皺をよせていないイギリスをみるのは、どれくらいだろう。

既視感。
脳裏に刻まれた映像が目の前の彼とかぶった。



あのころのイギリスは、今のアメリカにはいない。
いないはずなのに。








どうして。


















「――――…ちょうど良かった!昔からこういうベッド、欲しかったんだ!!」



腹の底から叫び出したくなるのをこらえてアメリカはいかだを海に帆織り投げた 。

海に浮かぶいかだに間髪入れずに飛び乗れば、イギリスの呆然とした顔が斜めに 映る。








「てめぇアメリカッ、そうじゃねぇだろッ!!」


呆れ半分、怒り半分。(いや、怒りの方が多いかもしれない)
一瞬にして元のしかめつい顔に戻るイギリス。
アメリカはそんなイギリスを横目で見やりながら、イカダのベッドで海を漂う。






(そうだ。君はそうでなきゃいけない)



二人きり。
この状況を早く打破しなければ、アメリカはヒーローでいられない。






「アメリカッ、壊すなよ!」







ただひとりのひとに、意識を奪われるなんて。
そんなことは、ヒーローにあってはならないのだ。




だけど。








「壊れれば…、もう少し二人でいられるなぁ……」


そんなアンビバレンツを抱えながら、アメリカはゆらゆらと果てしない水平線を 見つめるのだった。











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御本家さまにて米英遭難も始まりまして、思わず書いてしまいました。
……だって、イギリスがあまりに不憫で…(笑)(笑うのか)
最近アメリカがイギリス大好きvな感じだったのでこー、さらりと黒いアメリカ さんにデレツンを見た。
質悪いんだよデレツンってさ…。しかもアメリカ基本イギリスにデレがないから それを見るとどうしようもなくイギリスを幸せにしたくなります。(なってない が)
だってこれ一緒に遭難したのがフランスだったらとっくに喰われてますよ!(だっての意味がわからない)
フランス兄ちゃんはなんだかんだで面倒みるしなぁ、仏英も書きたくなってきた 。
仏英米英仏英米英中日中日英日米日仏英…な感じで頭ン中はローテ中。

うちの日本君はアメリカに厳しめですが(笑)
本家様の更新を楽しみにしつつ、それを見ながら更新していきたく。
麦わら帽子は子メリカ時代なくても目をつぶってください…。ストローハットのが正しいかもですが、麦わら帽子のイメージが好き。
暗くてぐるぐるアメリカ書いていて楽しい。(え)

07/06/07





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