何故だ?
何故お前は、そんな苦しそうな顔をしている?
歪んだ視界にお前が映る。
寝ては覚めて寝ては覚めて寝ては醒めた。
浮いては沈んで浮いては沈んで浮いては沈む意識。
今これは夢?現実?
朦朧としている世界で、お前の口がかすかに動いた。

ーーーーーーーーーーーーーーー俺の、せい?



Invisible Sun



「まだ、朝じゃないのか…………」
未だ暗い世界の中、びっしょりと濡れてしまっているシャツをつかむ。
不覚にも熱が出てしまっているようで、未だ意識がはっきりしない。
「寝たのか、寝てないのかよくわからんが…………」
それでも、だいぶ時間はたっているはずだ。
「朝でも、おかしくないよな…………?」
どうも調子がおかしい。矢張りこれは、あの妙な液体のせいなのであろうか。


「あれは、夢か…………?」


あいつが、自分の元に来た気がするのだが………。


無意識に唇に指をなぞらす。
何か、大切なことがあったような、気がする。


「現実にしては、」
覚えてなさすぎだし、やはりあれは夢だったのかと思う。
「でも夢にしては、」
表情が、気になった。



あんな表情。見たことがあったか…………?。



「だーーーーーーーっ、考えてもわからん!めんどくせぇ!!」
重苦しい、部屋のこもった空気を入れ換えようともうすでに乾いてしまっているタオルを目から外す。

涙は、止まっていた。


ベッドから、だるい体を無理矢理起こして、一歩踏み出そうとする。





「−−−−−−………!」




異変にようやく、気がついた。










「遅かったな次元」
五右ェ門の声に、入り口のほうに顔を向ける。
次元が、いつになく怠そうな様子で部屋に入ってきた。
「悪い、なんか寝た気がしなくてな………」


その言葉に、昨夜の次元の様子を思い出す。
あれだけ熱を出して、魘されていれば当然であろう。



俺が部屋に入ってきても、次元は目を覚まさなかった。
人の気配には敏感だ。いくら俺であろうと例外はない。
枕元まで近づいて、ようやく反応を示したぐらいだ。
調子は万全ではないだろう。


「おーーし、これでそろったな!今日は、昨日の獲物の片割れを取りに行くぞー♪もう片方なきゃ意味ねぇからな。……………次元ちゃん聞いてるのーー?」

ぼうっとした様子で、部屋の入り口に寄りかかったまま動かない。
おいおい、大丈夫なのかよ。

「そういえば、お主調子はどうなんだ?平気なのか?」
五右ェ門も心配そうに次元を見やる。
しかし、次元は無反応だ。


「もしもーーし、じげーん?」
「………あ、何か言ったか………?」
次元が俺の言葉に遅れて反応を示した。

…………………………………………………こいつ本当に大丈夫か(汗)。


「とりあえずこっちに来なさいよ。そんなところにいたんじゃうまく話が出来ないわ」
不二子の言葉にようやく地図を広げているテーブルへと足を向ける。


と、足下に置いてあったバケツに思いっきり引っかかり、次元は盛大に床へとダイブをしてくれた。



「−−−−−−………ってぇーーー、んでこんなとこに物が置いてあんだよっ!」
したたかに打ち付けた鼻をさすりながら次元がわめく。
「みりゃわかるだろーー?ったく世話の焼ける子だね次元ちゃんは。そんなに深く帽子かぶってなくてもいいでしょうが」
「うっせぇ、帽子は今更だろうが」
「はいはい」

やれやれといった感じで、床に座り込んだまま動かない次元の腕をとって立たせてやろうとする。

が。

腕に触れようとした瞬間、思いっきり振り払われた。


「子ども扱いするんじゃねぇよ」
むすっとした声で、俺のほうを見ようともせずに立ちあがった。



どきりとする。



これまで、こんなことはなかった。
まさか、昨夜のことが…………。
俺はいつにない冷や汗をかいて、もう一度、次元の腕をとろうとした。


「お主、熱があるではないか!」
と、一足先に五右ェ門が次元の腕をつかんでいた。
何か、むかつく………?
むかつくというより悔しいか。
俺より行動早いってどーいうことよ。
さすが、五右ェ門ってことか。

次元は、ばつが悪そうに下を向いた。

図星だ。

一安心。昨日のことがばれた訳じゃないらしい。
ばれて理由聞かれたってどうしようもないからな。


俺だっていまだにわかんないんだから。


「………………お前さん熱があるなら最初からいいなさいねーーー?」
熱があるのがばれたくなかったのだ。
この辺は昔っから変わってない。

我慢をしすぎるのだ。

そんな状態で何かやってもミスをするだけだろうと思うかもしれないが、こいつはここが違う。


(…………やり遂げちゃうんだよなぁ…………)


本当にミスでもしてくれれば、こっちだって言いようがある。
けれどこいつは全くミスをしない。
おかげで、全部終わった後に気がつくことがしばしばで(気がついたときはまだいい。気がつくことさえさせてくれないことのが多い。このごろはそのパターンが読めるようになってきたからいいが………)こっちの立場ってもんがない。


こいつなりの配慮なのだろうが、逆効果になってることを気がついているんだろうか?





五右ェ門がつかんだ腕をそのまま引っ張って、次元をソファに座らせる。
「服の上からわかるぐらい熱があって、何でいわないんだ………」
五右ェ門が怒りを抑えた声で誰にいうともわからずつぶやいた。
多分、みんなそうだろうな。

次元は一応一番年上のせいか、その辺の融通が利かない。
なんだかんだ言って俺らを言いくるめて、ついてくるつもりだろう。

みんなの心配ぐらい、聞き届けろよ。



「いや、言うつもりだったんだが…………、ちょっとタイミングが………」
熱のせいか、いつもより歯切れの悪い口調で、言いにくそうに言葉を紡ぐ。
珍しい。
さすがに今回は身体が辛いのだろうか。

「タイミングなんて要らないの。そういうことを言うときはいつでもいいから早く言いなさいよ。全く世話が焼けるったら」
不二子が、文句を言いながら薬と水を持ってくる。
根は優しいからな。根以外はどうだかわからないけど。
そこがいいんだよなv不二子ちゃんは。

素直に無理矢理口に放り込まれた薬を飲み込むと、次元はそのままソファに横たわった。
「悪い、今回はさすがにパス。これじゃ駄目だわ」
帽子を顔の上にかぶせて完璧に寝る体勢をとった。
こういうときもあるらしい。
これは本気で雹でも降るか。


何であれ、無理をしないことは嬉しい。


「一人で平気なのか?もしあれなら誰か………」
「よせよ。お前らがいたんじゃ、治るもんも治らねーよ」
「へっ、それだけ悪態つければ立派なもんだ。んじゃ、おとなしく寝てろよ?」
間違っても銃をいじったりなんかしてるんじゃねーぞ?
と、釘を差しておけば、返ってくるのは沈黙。
やっぱりそのつもりだったんかい。
ほんとにこいつは。

「「次元!」」
「へいへい、わかりました。おとなしく寝てますーーーー」
五右ェ門と俺の両方に言われて、ようやく次元はおとなしくしてることを承諾した。

ほんとに、しゃーないやつ。

「んじゃま、行ってきますかね?」
「おう、どじんじゃねーぞ。とっつあんも前回のときより気合い入ってるみてぇだしな」そりゃそーだ。片割れをみすみす盗まれちまってんだ。
もう片方を守るためには、すごい気合い入ってるだろうなぁ。



「ルパン様にかかればそんなものちょちょいのちょいよ!安心して眠っとけって」
あー、そうですか…そりゃ、よぅ…………。

次元の言葉は最後まで言い終わることは出来なかった。
代わりに聞こえてきたのはかすかな寝息。

「不二子ちゃーん?」
「だって、こうでもしとかなきゃおとなしくなんてしてないでしょ」
ウインクしながら見せたのは強力な睡眠薬のカプセル。
風邪薬と一緒に渡した物だった。
「さっすが不二子ちゃん!用意周到ーv」

五右ェ門はしばし悩んでいる様子だったが。

「拙者も、気をつけよう…………」
うん、それは俺も思ったね。その通りだよ五右ェ門。けどね。
「何かいったーーーー?五右ェ門ったらv」
不二子ちゃんにも聞こえてんだわ。
まだまだ甘いね、五右ェ門♪

「い、いや、何でもござらん!早く行こうではないか、なぁルパン!!」
しどろもどろになりながら出入り口に向かう五右ェ門を見て、不二子と二人で顔を見合わせて、にかっと笑う。
やっぱ五右ェ門をからかうのは面白いわ。

「じゃ、行きましょうかルパン」
「そうしますか」
もやもやした感情は、もう無かった。

手早く必要な物をまとめて、五右ェ門の待つ車へと移動する。
「ルパン遅いぞ!」
「今行くって!」

下から五右ェ門が俺を呼んでいる。


「んじゃ、行って来るな」
次元が寝ているのを確認して、その耳元にそっと囁く。





何なんだろうな。この感情は。





満ち足りた気分で、その部屋を後にする。








『「月の微笑み」待ってろよ……………!」』










次元の異変には、気がつかなかった。
…………………………………………………………………………気づけなかった。














2日目の夜が静かに押し寄せていた。











相変わらず進みがのろい。 全然進展してないような……。
今回は不二子ちゃんを多めにしてみましたv
ようやくルパン達が盗む物の名前が出てきましたよ。でも大事なのはすでに盗んでいる方(苦笑)
名前が出ればわかる人にはわかります。元となったもの。(……いや、どうだろう?)
さりげにル不二だった今回。たしかにカップリング入れてみたけど、みたけどっ………?(結構満足)
っていうかうちのルパンお子さますぎだろう………。





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