そういつだって追いかけっこ。


太陽を追ってぐるぐると。



でもそれは、太陽だって追っていることにはならないかい?










Invisible Sun












「次元っ!?」
「次元!」


「―――…次元大介!」

背中から激しい圧迫感。
足下が掬われそうになるのを堪えながら、耳に響く轟音に手を挙げた。
耳を塞ぎながら息を確保するルパンと五右ェ門は、続く銃弾の雨にその声 を飲み込まれた。

驚愕に声を上げたのはルパン達だけではない。
ネズミの男も信じられないとばかりに声を零していた。
それはヘリコプターの轟音に紛れルパン達にまでは届かない。
余裕を欠くな、冷静であれとする男には動揺に満ちた声を聞かれずに済ん だことは幸いだったが、形勢は一気に逆転した。
ヘリコプターから容赦のない銃弾が撃ち込まれ、そろった部下達はこぞっ てその餌食となる。

無論反撃をしないわけではない。
同じように放つ砲弾はけれど剣士によってことごとく切り落とされる。


予定外だ。


空からの逃走は予測できた。
けれどその逃走の補助が、次元大介だとは思えなかった。
次元大介は目が見えず、捕らえられていたせいで体調も万全ではない。
なにより「ルパンの相棒」であることが何よりのレーゾンテートルである 次元大介が、目が見えないことにより生ずるルパンへの負担を一番負担に 思っているはずだ。
それは精神からも次元を呵むことになる。
肉体と精神。
その両方の健康を欠いていてなぜ次元大介がここにいるのか。
爆風とヘリコプターの起こす風に視界を奪われながらも男は操縦席を確認 する。
確かに次元大介ひとりだけで。


次元は、操縦桿を強く握りしめながらマイクで声を張り上げていた。















『ルパン!五右ェ門!ロープを下ろす、勝手に乗れ!!』
「ならその銃弾止めろよっ!乗りたくても乗れねぇっての!」
『避けろ!』
「無茶言うな!!」

屋上は混乱を極めている。
雲ひとつない青空は、徐々に黒煙と白煙に侵されていく。
そんな中で、計算したのか煙幕が張られた状態と変わらなくなったそこに

落とされる縄梯子。
まだ響く銃声に意識を向けながらも、張り上げられる声にも耳を澄ます。
かといって無防備に耳を晒せば鼓膜が破られるほどの轟音に襲われてルパ ンは辟易と言った様子で次元と会話している。
先ほどから流れ弾を隙なく切っている五右ェ門は、その会話内容に手を滑 らせそうになりながらも二人の間に入っていった。


「漫才をしている場合ではないぞ!」
「だってゴエちゃんなんか言ってやってよ!?」
「次元、離れても平気だ。もう拙者は掴まった」
「五右ェ門っ!」


酷いなどと軽口を叩くルパンも、けれど行動は素早く縄梯子に足をかける 。
泣き真似をしつつもその視線は煙幕の中を窺っている。
そんなルパンを確認しつつ、五右ェ門は一歩先に操縦席にと踏み込んだ。
見慣れた背中が操縦席にと収まっているのに五右ェ門は急いで駆け寄る。

「次元、不二子はどうした!?」
「車。気づかなかったか?」
「それは屋上から確認したが計画とは違うだろう!お主、目が見えないは ずでは…」
「おう、だから早く変われ」


至極当然のように吐かれた言葉に。
五右ェ門は目を見開いた。
















ルパンは、急激に上がる高度にバランスを崩しそうになりながらも縄梯子 に掴まり一点に集中していた。
右手に構えているのはワルサーP38。
煙幕が晴れる……、薄れる一瞬を待ち引き金に指をかけている。
風と、やたらに揺れる機体に狙いを幾度となく外されながらルパンは息を 詰めた。


光ったのは奴の銃口。


疑いもせずにルパンは指を引く。
瞬間、頬を掠めた鋭い痛み。
それと共に、鈍く嫌な音が耳に響く。



「―――…っぶねぇ…!」

ビッと繊維が切れる音に、ルパンは反射的に縄梯子の最上部にと腕を伸ば す。
途端、先ほどまで左手が捕まえていた縄の部分がぷつっと切れて梯子がた だの一本の縄状態になるのに、ルパンは詰めていた息を吐いた。
まだヘリコプターは安定しない。
風がさほどない今日の天候に、この状態が続くのは流石におかしい。
屋上からは大分離れて、もう射程距離からも外れるだろう。


「……なんで、次元が…っ」

ルパンは、ワルサーをしまうと両手でしっかりと縄を握る。
縄を絡ませるようにした左手は、感覚がなくなる一歩手前だ。
自分でも見たくなくなる、左手の無惨な姿にルパンは目を逸らしながらも

機体の中へと乗り込んでいった。



















「――――…っ、ルパンめ…」

左肩に続けて撃ち込まれた銃弾は、すでに男に左腕の感覚を失わせていた 。
止血を施しながら聞こえる崩落の音に、男は残った部下に声をかける。


「撤退だ!指示に従ってここを後にしろ!!」


もうすぐ警察がやってくるだろう。
あれだけの銃撃と爆音が続いたのだ。
ルパンにしてやられたことに意識を引きずられてはならない。

現に、ルパンも失敗を踏まえてこちらに乗り込んできている。




「大事なのは……切り替えだ」

青空の中、すでに点となったヘリコプターを睨み付けながら男は、その場 を去っていった。












なんとか場面は動きましたお待たせしましたインサン29をお届けします。
今回は視点が目まぐるしく動いて安定しなくてすいません…orz。
ようやく次元は出てきたけれど!
やっぱり次元はいいなぁ…・
なんとか折り返しは過ぎております。まだ順調には終わりませんが(え)

次はルパン視点で、色々収集に入らないとと思いつつ。
ル次の欠片を見つけに行こうとも思います。(これル次なんですよ!(今 更)


08/03/02



Back



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送