逆襲エイプリルフール













「くっそイギリスの野郎……」
小さく呟くだけでも随分と頭に響く。
フランスは床に這い蹲りながら必死で吐き気と頭痛を堪えていた。
本日はエイプリルフール。
楽しい日になるはずだったが、その予定は見事憎き隣国により崩された。


正直言って油断していた。
最近では珍しい、イギリスの裏工作に見事引っかかってしまった。
今年はエイプリルフールにかこつけて何をしようか。
そんなことばかり考えていたせいか、イギリスの罠に気づかなかった。

これが笑顔でフランスを誘ったり、とかすればこちらもそれなりの覚悟を して挑んだというのに。(イギリスはある程度隙を見せてこちらの警戒を わざと買う傾向がある。その方がおもしろいとは本人談。全く悪趣味なこ とだ!)
その隙を見せないということは、イギリスが本気を出してフランスを謀っ たわけで。
外交手腕は認めざるを得ないイギリスに、フランスはあっさりと騙された 。
実は自分の性格を知りきってるんではなかろうか。
不器用な性格をしていることを、本当は自覚してるんではなかろうか。
そうでなければあんな風にフランスを誘うわけがない。






最近会議が続いて疲れたから気晴らしに。
老体のお前には連日の会議は堪えただろう?
ああだから飲みにも行けないのか。
俺?俺は最近子守りもあったしな。
景気もいいし奢ってやる。
いいところ見つけたから、つき合えよ。






あくまで不遜な態度は崩さずに。
けれどどこか寂しいという顔をして。


そういえば、イギリスがシーランドにかまけている分(なんだかんだでイ ギリスも面倒見がいい)アメリカは最近カナダとよく一緒にいる。
フランスもシーランドを連れて帰るイギリスを見送るばかりで、からかう ことすらしていなかったことを思い出した。
シーランドと一緒のイギリスは、楽しそうだけれど彼の兄であるというこ とでいつも以上に余裕を崩せなかったはずだ。
イギリスはシーランドを可愛がっているが、きっとその分昔のことも思い 出されたろう。



そのことを考えて、フランスは不適そうに笑っているイギリスに同じく不 適に笑って見せた。





フランスも忙しかったし(会議と、この日の準備のためだ)、イギリスと 二人で飲むのは嫌いじゃない。
何より奢りだというのも魅力的だ。







「うまい酒、飲み比べ出来るならな」

そんな言葉を返した、半日前の自分を呪いたい。















「よ、いいザマだなぁフランス?」
「………てめぇイギリス……」

頭痛に目の前がくらくらするフランスに、楽しそうな声がかかる。
突っ伏していたいのを堪えて、声の主を睨み上げた。
そこには爽やかな笑顔を貼り付けたイギリスがフランスを見下ろしている 。

「よくも、騙したな……」
「何がだ?居心地も酒の味も良い店を探して、お前の好きな銘柄を好きな だけ奢っただろ。お前の財布からはコインひとつ出しちゃいない」
「違うだろ……」
「飲み過ぎたのはお前の自己責任だ。何が違うことがある」


イギリスはしゃがみこんでフランスと目線を近づける。
膝に腕を付いて頬杖しながら首を傾げる様子は、見た目だけなら可愛いと 言える。
窓から差し込む光がイギリスの金髪をふわふわと光らせて、微笑む様子は 愛らしいと言ったって良いだろう。
だがしかし。


「……絶対、お前酒になんか混ぜただろ…!」


そうだうっかり去年認めた通り、イギリスの見た目は並以上で可愛い。
中身に多々問題はあるものの、それひっくるめて可愛いと思えてしまうの だ、自分は。

そんなイギリスがほんの少しの甘えを見せて、誘ってきた。
態度こそ不適である物の、なし崩しでもなく飲みに誘うと言うことは人寂 しかったのだ。
それをフランスに求めるだなんて、可愛いにも程がある。(そう思った半 日前の自分が心底恨めしい)
そんな据え膳を逃す理由もあるわけはなく。

美味しく酒をいただいたあとは、美味しく当人もいただこうと思っていた のだ。
ちょっとやそっとのセクハラでは動じないイギリスを。
エイプリルフールにかこつけて思いっきり甘やかしながら食べてしまおう と考えていたフランスが。
飲み過ぎた酒で意識を失い目が覚めたらこんなザマだなんて、まずありえ ない。



「だって、混ぜないだなんて言ってないしな」



騙してはいないさと、それはそれは晴れ晴れとした笑顔で言われてフラン スは床にとまた突っ伏した。
白い指先で摘んだ怪しい錠剤をそれ以上見ていたらきっと吐いてしまうだ ろう。



「……混ぜるとも、言ってねぇくせに…」
「それは日頃の行いを考えて行動すべきってことだろ。ま、今日は一日ゆ っくり寝てろよ。お前が寝てれば世間も平和。皆が俺に感謝するのは気分 良いし」

息も絶え絶えに反論すれば、さらりとイギリスはフランスの傷をより抉る 。
何か少しでも仕返しは出来ないかと、イギリスを窺ったが彼はひとつ欠伸 をすると立ち上がった。
三歩ほど先にあるフランスのベッドから毛布を一枚持ってきて、フランス に被せる。
朝日に殺されそうだったフランスには悔しいがありがたい。


「手を伸ばせば水差しとグラスが届く。俺にはお前ちょっと運べないし、 運んでる最中に吐かれても嫌だし。一応ビニール袋もあるから」
「………心遣いに感謝するよ…」
「そうだろ。俺も朝方まで付き合って眠いし、お前のベッド借りるから。 動けるようになったら入ってきてもいいぞ。蹴り落とさないようにしてや る」




じゃあなおやすみ、と可愛らしく笑ってベッドに潜り込むイギリスに。
それ以上何も言う気力は残って無くてフランスは毛布をたぐり寄せる。
目を瞑って思うことは今日のエイプリルフール。


体調が戻ったらイギリス一人に代償を支払って貰うと誓いながら。
今はただ襲い来る頭痛と吐き気に両手をあげるばかりだった。












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今年のエイプリルフールの兄ちゃん封じに萌えまくって書きました。
イギリスが最強っぽくかけて満足です。
いやしかしあらすじは本当いい仏英でした…。ありがとう魔王…!!
スペイン兄ちゃんの平和なエイプリルフールにほんわほんわしつつ、仏兄 ちゃんがいない少しの物足りなさを形にしてみました(笑)
いや、去年がとんでもなかったんだとは思いますが。
あとコミックス発売したばかりだし、あそこまでやるのはちょっと…とい うのもあったのかなー。
しかし魔王のサービス精神は本当に見習いたい次第です。すごいなぁ…。

仏兄ちゃんの復讐も書きたい次第ですが、確実に裏仕様なのでどうするか …。
落書きだけでも相当大人の世界ですよ。
でもイギリス滅茶苦茶にしたい気分が最近自分を襲います。(ぶっちゃけ すぎだ)
08/04/08





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