彼が彼をどれだけ好きか、知っていた。 意外に平気そうだと、思っていた。 「イギリス、手伝おうか?酷い怪我やん」 「誰がやったんだよ、誰が」 フランスが海上を封鎖したために、イギリスを本国まで送り届ける羽目になったのはスペインだ。 ご近所のフランスが行けばいいのに、と思いはしたがその内心を考えると確かにスペインあたりが妥当なのかもしれない。 あの可愛くない、憎らしいイギリスの焦躁した様子が見られるかと思うと少しだけ気分も軽くなった。 けれどそんな気持ちでイギリスに宛がった部屋に向かえば、彼は淡々と怪我の手当をしているのみで。 残念に思わなくもなかったが、怪我の様子に流石に絆される。 手を貸そうと声を掛ければ、至極当然の言葉を返された。 そうだ。 この怪我は、アメリカを中心に自分たちが彼に付けた傷。 世界で孤立させ、集中攻撃した結果なのだ。 「そうだけど、俺もっと酷いことお前にされたわ」 「過去のこと愚痴愚痴言うんじゃねぇよ、あーくそ、あの野郎恩も忘れやがって……」 「フランスのことか?」 イギリスが解ける包帯に眉を寄せつつ悪態を吐くのに、スペインは苦笑で返す。 相変わらずな二国らしい。 よかった、とスペインは思う。 フランスは心配していたが、思ったよりもイギリスはしっかりしている。 痩せたし、怪我も軽いとは言えないがしっかりと治す意思もあるならば平気だろう。 そう思い、部屋へ一歩踏み出したときだった。 「ああ?アメリカだよ。あーあ、あいつへの待遇は結構良かったんだけどな…。まさかここまでやるとは思わなかった。俺もまだ、甘かった」 「……何、言うとるん?」 「ま、植民地だし独立したいって思うのは当たり前か。お前も気をつけろよ?いつロマーノが宣言してくるかわからねぇし」 何を、言っているんだろう。 彼が彼をとても可愛がっていたことを知っている。 悪友から話は聞いていたし、見に行ったこともある。 彼に向ける彼の笑顔は本当に幸せそうで、その笑顔を他所にも見せればいいのに何て思った。 今回の戦争が、どれだけイギリスにとって辛かったのか、知っている。 知っていると、思っていた。 あの雨の中、スペインは遠く離れていたからよくはしらない。 けれどアメリカやフランスの様子で、大体の状況は悟った。 だからこそ、スペインはこの気の重い役目を引き受けたのだ。 わかった上で仕掛けたけれど、後味がどうにも悪くて。 平気そうなイギリスに、安堵したのは大間違いだった。 ああ。 そうか。 自分たちは、何てことをしてしまったのだろうか。 「スペイン?手伝えよ」 彼は、傷つきすぎて置いてきてしまったのだ。 大切な物を。 彼を確かに愛していたと言うことだけを。 |
07/07/18 |
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