オフライン仕様なので少々読みにくいですがご容赦下さいませ。 「……冬が、来るな」 晩秋は、忙しさを理由になるべく考えないようにしていた。 事前に覚悟していたとはいえ、それが目の前に訪れると相当の衝撃で。 彼等がまだいる中で彼等がいなくなったときの話は、しなくてはならないとわかっていてもどうしても避けたかった。 言葉は力を持つ。 予言が正しいことも避けられないことも、それは彼等自身が訪れたことにより知っていたのに。 それでも音にしなければもしかしたらという思いを捨てられなかった。 今はただ。 そんな日々すら遠いようだ。 「皆…、大丈夫だろうか」 手にした書物を書庫へと仕舞おうと移動する廊下で、窓から見えた風景にオレイアスはそっと目を伏せた。 あのときは森を彩る赤や黄色で賑やかにも思えたけれど。 葉がふっと落ちていった木が目に入って、小さく息を付いた。 早朝や深夜、肌に感じる冷たさが日に日に深くなっていく。 澄み渡る空に硬質な空気。 冬が、すぐ傍にまでやってきている。 「ーー…あのときも、皆不安になったものだったな」 オレイアスは、止めていた歩をまた進め始めた。 コツコツと廊下に響く足音が嫌に大きく聞こえる。 何故だろう、と考えてみてすぐに答えに行き着いた。 いつだって、彼が隣にいたからだ。 彼が半歩前を歩いて、その僅か後ろに付き従って。 軽やかな彼の足音に続く、自らの足音。 常に一生懸命な彼のテノールが、ひきりなしに己にかけられて。 あたたかで明るい、日々が当たり前だったからだ。 ------------------------------------------------------------- 「戴冠式、無事終わって良かったな」 「本当にね。最初はどうなるかと思ったけど…、あー、けど久しぶりの正装は肩が凝る!」 戴冠の祝いの席が終わったのはつい先ほどのことだ。 途中抜け出していた時間もあったけれど、最初から最後まで戴冠式を見届けた二人は ようやくあてがわれた部屋にと腰を落ち着けている。 スーザンはルーシィを連れて二人よりは早く場を後にしていた。 兄弟と姉妹とでそれぞれ一部屋ずつあてがわれた部屋は二人で使うと言っても存分に広く、 英国の自分の部屋に慣れた身となっては少しだけ落ち着かない。 ナルニアに来てからも野宿や地下などそんなところばかりにいたものだから、 エドマンドはなんとなく部屋の片隅で着替え始めた。 テルマールの正装ではなく、かってのナルニアの正装に身を包んだ二人は 着替えを手伝うという侍女の言葉を丁重に断って自ら留め具に手をかけている。 ばさりと重そうな音を立てて外れたマントをエドマンドは大きく溜息をつきながら見やった。 適当な椅子にそのまま投げ捨てるのを、ピーターが見咎める。 *********************************************** 笑った顔の目が決して笑ってない。 こんな言葉を口にしながら、すでにエドマンドは軽い口づけを何度もピーターに落としている。 握っているだけであるはずの手は、そういう意図を持ってして指が動き始めていて。 優しく指の腹で手首やその指先をさするのに、ピーターはぴくりと震えた。 その反応に気をよくしたのはエドマンドだ。 一番上の留め金だけ外されていた首元を左肩を押さえつけていた片手で広げ始める。 動こうとするピーターの腰を太股で挟み込み、何事か言おうとした口をそのまま塞いだ。 深く口づけながら舌を侵入させる。 逃げまどう舌を追いかけながら、わざと角度を変えて濡れた音を響かせた。 途端体温があがる兄の身体に、笑みを浮かべながらエドマンドはシャツのひもを解く。 こういうところはやはり変わっていないと、完全にさらけ出した胸元に手を這わせた。 同じ兄弟であり、エドマンドの色も白い方にはいるのだがこうして比べてみると違いは顕著だ。 兄妹のなか一人だけやたら色素が薄いことを、兄はいつも気にしているようだったが (おかげで王時代の晩年は少しでもたくましく、と髭を生やしてキスを仕掛けるたびくすぐったかった) こちらとしては楽しいことこのうえない。 ぷつんと、固くなり始めた胸の中心に指を絡めながらエドマンドは耳元にささやいた。 「相変わらず肌白いね、変わってない。ここもこんなに綺麗なピンクだし…」 「……っ言うな!嫌なんだから!」 「嫌な割に、反応はいいよねぇ……」 くるくると指を回して弄ってやれば徐々に固くなっていくそこに、エドマンドは笑みを深めてピーターのその強く瞑った瞼にキスを落とす。 何度か優しく口付ければ、おそるおそると言った感じにピーターが目を開いた。 潤み始めたその瞳に、エドマンドは絡めた手をきゅっと掴んで。 ふっと息をつくその吐息の熱さを確認しながら、今度は耳に口づけながら囁いた。 「ね、しよ?」 こくんと、頬を染めながら小さく頷く兄の、幼げな動作とのギャップに腰が重くなるのを自覚しながら。 エドマンドは、自らの服に手をかけた。 このほかにエドと王子の短編小説もあります。 弟兄はこれ以降はR-18ですよ。 |
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