オフライン仕様なので少々読みにくいですがご容赦下さいませ。



『それすらもすべて愛しき日々』(漫画に関連した小説になります)




「すいません、お休みの所に…」
「あー大丈夫大丈夫気にしてねぇし」
「兄貴は気にしろ。前々からちゃんと今日はイタリアと日本が来ることは言ってあっただろう…。忘れてでかけたのかと思ったぞ」
ドイツの家に訪れた日本とイタリアは、寝起き、とありありと分かるプロイセンを前にそれぞれ挨拶をする。
イタリアはいつもと変わらずハイタッチで久しぶりー!と再会を喜んでいたが日本が丁寧にお辞儀するのにプロイセンはひらひらと手を振った。
客人に対するのにあまりに軽いプロイセンに、ドイツは後ろからその頭を軽く小突く。
そんな二人の様子に笑みを零す日本は、勧められた席に腰を下ろしながら辺りを不躾にならない程度に見渡した。
年季が入っていると思われる暖炉の火は見ているだけで暖かで、ぱちぱちと時折木の爆ぜる音が耳に染みる。
勿論エアコンもこの屋敷には完備されているのだが、よく手入れされた昔からの家の暖炉はやはり特別だ。寒さが厳しいドイツでは特にそう思う。
柔らかな火の色に目を細める日本は、目の前に置かれるコーヒーの匂いに笑みを深めた。
「ああ、良い香りですねありがとうございます」
「砂糖とミルクは?」
「いえ私は大丈夫です」
ぱたぱたとキッチンとリビングを行き来するドイツがキッチンへのドアを静かに閉めた。
用意が終わったのだろう。
プロイセンがミルクピッチャーとブラウンシュガーをテーブルにセットするのと同時にイタリアから手が伸びる。
苦笑しながらイタリアにとセットを向けてやるプロイセンは日本にと伺いを立てた。
日本は笑いながら小さく首を横に振ってそのままカップを手にする。
ドイツが煎れてくれるコーヒーは薫り高く、日本が苦手とする酸味が少ないからそのままでも十二分に美味しいと感じられた。イタリアのように更にうまく味を調整できるならばミルクや砂糖を入れるのも楽しいだろうが、まずはこのまま味わいたい。
プロイセンはそうかと小さく頷くとようやくソファにと腰を下ろしたドイツの隣に自然に座った。
シュトーレンを切り分けるドイツの手元を見やりながら、ぽろりと零れたレーズンをその指先で拾い上げたかと思うと口に放り込む。行儀が悪い、とドイツが小さく窘めるがプロイセンは悪びれた様子を見せなかった。
本当にこれではどちらが兄かわからないな、と日本が笑っていればほどなく目の前に切り分けられたシュトーレンが置かれる。
「クルミ入りのケーキ…、というよりもパン、と言った方が食べやすいかもしれん。日本にあるものとはまた違うだろうから」
「ああそれは勿論了解しています。本場のシュトーレン、食べてみたかったので嬉しいですよ」
クリスマスの時期にはこれを未だに作り置きしているのだというドイツの説明を聞きながら、日本はフォークを手に取った。
食に関して日本は中々にこだわりがある。
食べるならば美味しい物がいい。家では安価で美味しい物を求める傾向だが、出先ともなれば割り切って値段に拘らず名物を求める傾向があった。
そんな日本の舌は肥えていて、また欧米人とは違う感覚を持っている。
以前ドイツのパンを食べづらそうにしていた日本のことをドイツは覚えているのだろう。(唾液の量が違うため、多少のぱさつきでも問題なく食べられる欧米人と違いアジア地域の人間はその辺りで苦労する場合がある)
元々保存食としてバターや砂糖を出来る限り少なく使ったケーキだ。
ドイツの細かな気配りに礼を述べつつ日本は一口ケーキを頬張った。











SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送