「……っ!おまっ!いきなり何してんだよッ!?」
「それはこっちの台詞だ!」






オーバーヒート







マズイ、と思って逃げ込んだ部屋でドアを閉ざした瞬間ぼたぼ たと飛沫が床に散った。

鼻からどろりと流れる生温い液体に賢木はオーバーヒートを起こしたかと冷静に判断しながら乱暴に手で鼻を拭う。
けれど血は止まる気配を見せずに、口元まで伝っていく。
気に 入りのシャツだったんだけどな、と肩で鼻を押さえながら床を 拭う賢木はドアから注意が外れた。


途端飛び込んできた皆本に、賢木はへらっといつもの笑顔を向 ける。


しかし今更そんな賢木に誤魔化されずに皆本の表情は硬いまま だ。
有無を言わさず賢木をソファまで連行して座らせる。
真正面からのぞき込まれてさて次に飛び出すのは治療しながら の説教かと賢木が身構えていれば、生暖かい感触に襲われた。


予想の斜め上をいった皆本の行動に、賢木は思わず固まってし まう。


ぴちゃ、と濡れた音がようやく耳から脳にと繋がる頃には頭も 腕もがっちりと皆本にホールドされていて賢木には逃げようも ない。
丹念に鼻や口周りを舐める感触に、さっと頬に朱を走らせた賢 木はようやく声を発した。


「何考えてんだよ!?こんな血舐めるなんてお前馬鹿かっ!」
「馬鹿は君だろう!こんなになるまで能力使うなんて薫達より 性質が悪い!!」
無茶するななんて言えた義理か!

行動は突拍子もないが、皆本の言い分は正論だった。
うまい反論が思いつかず(皆本の行動に疲れた体はやはり混乱 しているらしい)ぐっと言葉につまる賢木に、皆本の方が泣き そうな顔になって賢木の肩にと顔を埋める。





「……本当に、さっきはびっくりしたんだ…。オーバーヒート 起こして鼻血出すって、かなり危険な合図だろう…。怒鳴る元 気があって、少し安心した」
「………皆本、」
「あのな賢木。そりゃ僕にとって優先すべきはあの子たちだ。 特務だって日常生活だって一番にあの子らを気にかけなきゃい けない」
そうでなきゃ、君だって怒る。




くぐもった皆本の声は震えていて、賢木はふっと肩に入ってい た力を抜いた。
そんな賢木に皆本は顔を上げて額と額とをくっつける。
じわりと伝わってくる体温が、心地よい。


「僕もそうでありたいと思っている。あの子たちを出来る限り 守ってやって支えてやりたい。それは本当だ」
「……そうできゃ、あのチルドレンが懐くわけねーよ」


間近で真剣に語る皆本に、賢木もふっと表情を和らげた。
誰も信じられなかった彼女たちに、本気で全力でぶつかってい った皆本だからこそ彼女たちは今こうして彼とチームを組んで いるのだ。
賢木だってそれを疑うはずもない。
そんな賢木に、皆本は目を細めて吐息をかかる距離で。

訴えた。




「でも僕の一番は君だ」
「………みな、も、」
「でも僕は君を優先できない。一番なのに、一番だから出来な いよ」
君だから。




皆本の瞳に賢木が映っている。
間抜けな顔をしているとは、思う。
呆けた顔で、なにをそんなに。




「だから、君が君を優先してくれ。頼むから。出来ないって言うだろう。けど、それで君に何かあったら。多分、僕は」
僕だけじゃなくて、他の誰かをも憎むよ。




なにをそんなに嬉しそうな顔をしているの。




皆本の舌がそっと賢木の唇を辿る。
その熱さが心地よくて。

皆本にだけは知られたくないと思っていたのに。
こうして心を砕いてくれる事実に、歓喜している。




「皆本、」




でも。
それだけで十分なのだと。






「前向きに検討しとく」
「……日本語は、こういうとき嫌いだよ」






噛み付くような皆本の口付けに賢木は目を閉じながら。
それでも曖昧な答えを飲み込んでくれた皆本の背中に。
そっと腕を回すのだった。






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とりあえず皆本さんはこれっぐらい賢木先生を大事にして欲しい。

鼻血イラストから派生SS。
元々SSS予定だったせいでSSにするには文章が微妙ですいません…。いえいつもですが←
色々衝撃的な皆本さんが少し前の本誌にいたそうで、そのとき他の原稿やってたんであえて目に入れなかったのですがあとから色々情報得てみっなっもっとーーーーーーぉおぉぉ!!お前そこになおれえぇぇぇええええええええ!!
って、沸き立って出来たのがこれです。
多分誰よりも無茶してる賢木先生に気づいて。
んでもって与えて欲しいです。
なんかもう、自分の幸せのために賢木先生って動かないと思うんですよ。
多分賢木先生は皆本が思っている以上に皆本を大事に思ってると思います。
だから皆本が傷つくくらいなら自分の幸せは求めない感じがしてならない…。
逆に皆本が傷つかないためならいくらでも頑張ると思うの…。
なので自分消化のためにこんな感じのもの考えてました。
賢木先生「だから」、他の誰よりも優先できないし、気づかないうちに傷つけてることがあるんだと思います。
近いから。チルドレン達には気をつけても賢木先生には気をつけない。
……それなら…まぁ…ってことで。長々とすいません。
だってあんだけすごい人なのに賢木先生って冷遇なんですもの…orz。
幸せにしてやりたい…といいつついつも薄暗い感じですいません…。

しかし思えばガチで出来上がってる積極的な皆本って始めてかもしれません。
正直楽しすぎました。
あまりやりすぎるとキャラが違うのですが、その辺気をつけつつまたお目見えさせたいです。

09/09/10





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