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ドアを開けた瞬間降ってきたのは花だった。










0628-0701










「……なんだ、コレ?」

皆本からチルドレンのデータが欲しいと言われ(きっと新しいリミッ ターの開発のためだろう)、家まで赴いた。
バベルに拘束されること約五日間。
もう夜は充分に更けていたけれど、外へ出ることが久しぶりな賢木に とって冷たい風を感じられるだけでもありがたい。

面倒なことは重なるもので、緊急オペから始まって警察の緊急応援要 請にその上賢木自身のサイコメトリーと生体サイコキネシスのデータ を欲しいと言われて正直日にちの感覚がなかった。
正確なデータのためにと、携帯すら没収されてなにを基準に過ごせと 言うのか。
高超度の複合能力を持ったエスパーは少ないから、仕方ないとはいえ 正直骨が折れた。
調べた上に解析するのが自分自身というのが更にため息をつかせる。

ようやく一段落した、と思ったところに皆本から連絡が入り(彼は彼 でチルドレンとコメリカへ出張していた。大変なんて言葉じゃすまな いことぐらい容易に分かる)これ幸いと賢木は抜け出した。
チルドレンは、バベルにとって最優先事項であるからして抜け出すに は充分な理由だ。

皆本のことだから夜遅くに呼び出すことに関して罪悪感を抱いている だろうから、きっとお茶ぐらいの準備をしているに違いない。
久しぶりに同レベルの会話をするのも楽しみだし、何より友人と会え ることが嬉しい。


データを片手に、にこやかに皆本宅へ足を踏み入れた賢木を待ってい たのは花の海だった。
あまりにすごい勢いで花びらが降ってくるものだから思わず足を取ら れる。
ぺたん、と玄関先に座り込む賢木にチルドレンが次々に姿を表した。


「「「賢木センセイッ!誕生日おめでとーv」」」
「………へ?」


突然のことに、賢木はどう反応していいかわからない。
確かに埋もれた花から感じるのは、お祝いの気持ちばかりで。

きょと、と瞬きを繰り返す賢木はチルドレンの後ろで静かに佇んでい る皆本にようやく気づいた。


「皆本!」
「……わざわざすまないな、賢木。すまんが薫達は、ケーキの準備頼 む」
「「「はーいっ」」」



チルドレンのテンションとは反対に、どうにも暗いオーラを纏った友 人に賢木は首を傾げる。
それでも皆本が差しだす手を手を重ねながらようやく立ち上がると、 あちこちにくっついた花を軽くはたいた。
おめでとうの言葉に、花束。(と言って良いのかよくわからないが)
確かにお祝いしてくれていることは分かるのだが、いったいどうして こんなことになっているのだろう。



「悪い、賢木」
「なにがだ?誕生日って…、」
「本当は当日祝いたかったんだが…、出張が長引いてな。お前に連絡 もとれなくて……。研究室に篭もってるって言うから、無理に取り次 いでも貰いにくかったしな」



皆本が小さくため息を吐きながら、賢木の頭から一枚花びらを掴んだ 。
皆本の言葉に賢木はようやく理解した。
そう言えば出張前に出来れば時間を作って欲しいと言われていた。
6月28日。
出張から帰ってくる予定の日に、疲れているだろうから愚痴でも付き 合えと言うのかと思っていた賢木は快く了承した。
あまりの忙しさにそんなことなど正直すっかり忘れていた賢木にして みれば、皆本があやまる筋合いなど全くない。
それどころか、疲れているだろうに彼は自分の誕生日の祝いを予定し てくれていたのだ。
感謝こそすれ、申し訳ないのはむしろこちらだろう。



「気にするなよ、そんな日のことぐらい、」
「そんな日じゃない!」


苦笑しながら賢木が、やはり気落ちしている皆本の肩を叩けば、 予想外の反論にあった。
必死な皆本の表情に思わず賢木は息を飲む。


「君が、そういう風に誕生日を思ってると思ったから…!だから当日 に祝いたかったんだ」
「……や、でももう成人してるんだぜ?そんな祝うようなことでも… 」
「いくつになっても、君と会えたのは君が誕生日に生まれてきたから だ!それを祝いたいと思ってなにが悪い!!僕は、僕は君と会えて本 当に嬉しいんだからな!」


だからなんでそんなストレートな言葉をぶつけることが出来るのか。
賢木は、思わず顔が赤くなることを自覚しながら慌てて皆本の口を塞 ぐ。

もう今更遅いとは思うが、これ以上チルドレンにこんなことを聞かれ ては後でどんな目に遭うかわからない。
不満そうな皆本に懸命に謝りながら、賢木は首を縦に振った。


「わかった!お前の気持ちはすげー嬉しいからもう黙ってくれ!!」
「……けどな!」


やっぱり、当日じゃないと意味無いなと。
少しは落ち着いたのか、賢木の手をやんわりと外しながら静かに呟く皆本に。
賢木はそっと息を吐いた。

しまった。
リミッターを付けてくるんだった。

検査のために外したままのリミッターは、今も賢木のデスクテーブルの上に置かれているだろう。
そのせいで皆本の気持ちが嫌と言うほど流れ込んでくる。
本当に嫌なわけじゃなくて。
彼が、本当に自分を大切に思っていてくれることがわかってしまってどんな顔をして良いのか分からない。


皆本に会えたことで。
もう充分なプレゼントを貰っていると、正直賢木はそう思うのだがそれを彼自身は納得しないのだろう。


これ以上満たされてしまったら。
その先を考えてしまうと、正直怖い。

怖いから、あまり伸ばしたくは。
ないのだけれど。





「……じゃ、来年は当日によろしく頼む、な」
「勿論」

賢木の精一杯の言葉に嬉しそうに笑う皆本を。
賢木は、嬉しくて泣きそうになりながらぎこちない笑顔を懸命に作った。









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賢木センセイおめでとうイラ&SSS。
三日遅れたあげくおめでとうなはずなのに薄暗いのはなんでなのと自問自答は何度もしています。
ついでに遅れたのは皆本のせいです。奴が出張行ってたのが悪いんです。(爆)

これ以上ないって程幸せにしてあげたかったのに、そうしようとすればするほど賢木センセイって一歩ずつ下がっていく…orz。
皆本ぉぉぉ!頼むから幸せにしてあげてください…。

08/07/01





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